はじめに
スーパーで寝転んで泣き叫ぶ、思い通りにならないと物を投げる、切り替えができずに何十分も泣き続ける。
子どもの癇癪(かんしゃく)に、その場でどう対応すればいいのか分からず困っている保護者の方は少なくありません。
自分は児童発達支援や放課後等デイサービスの現場で、癇癪が強い子どもたちと数多く関わってきました。
その経験から感じているのは、癇癪は「わがまま」や「しつけ不足」で片づけられるものではなく、その子なりの理由があるということです。
この記事では、癇癪が起こる背景と、その場での対応、そして家庭で取り入れやすい予防的な工夫について、現場での経験をもとにお伝えします。
癇癪とは?よくある誤解
癇癪は、思い通りにならないときに大きな声で泣いたり、床に寝転んだり、時には物を投げたりする状態を指します。
年齢的には2〜4歳頃に多く見られますが、年齢が上がっても癇癪が続く子どもも少なくありません。
「わがままだから」「甘やかしすぎたから」と考えてしまう保護者の方も多いのですが、自分が現場で見てきた子どもたちの多くは、感情や状況を言葉でうまく処理できないために癇癪という形で表出しているケースがほとんどでした。
つまり癇癪は、子どもからの「困っている」というサインの一つとして捉えることが、対応の第一歩になります。
癇癪が起こりやすい原因
発達特性が背景にある場合
癇癪の背景に、感覚の過敏さや切り替えの苦手さといった発達特性が関わっている場合があります。
たとえば、予定の変更に強い抵抗を示したり、音や光などの感覚刺激に圧倒されてパニックのような状態になったりすることがあります。
こうした特性は、ASD(自閉スペクトラム症)やADHDのある子どもに見られることが多いとされています。
特性そのものについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
発達特性がある場合、癇癪は「本人の意思でコントロールしにくいもの」であることが多く、叱ることだけでは解決しにくいという点を知っておくことが大切です。
環境要因が関わっている場合
発達特性の有無にかかわらず、環境的な要因が癇癪のきっかけになることも多くあります。
- 疲れている、眠い、お腹が空いている
- 予定の見通しが持てず、不安を感じている
- やりたいことを途中で中断させられた
自分が現場で見てきた中でも、こうした「その日の状態」が重なったタイミングで癇癪が起こりやすいと感じる場面が多くありました。
癇癪そのものだけでなく、起こる前後の状況を振り返ることが、対応のヒントになります。
癇癪が起きたときの対応
その場でのNG対応
癇癪が起きたとき、つい大声で叱ったり、要求をすぐに叶えて泣き止ませようとしたりしてしまうことがあります。
しかし、大声で対抗すると子どもの興奮がさらに強まりやすく、要求をすぐに叶えてしまうと「泣けば通る」という学習につながる可能性があります。
どちらも短期的には収まったように見えても、長い目で見ると癇癪を繰り返しやすくする対応になってしまうことがあります。
落ち着かせる関わり方
まずは、安全を確保したうえで、大人自身が落ち着いた声のトーンを保つことを意識してみてください。
癇癪の最中は、言葉で説明してもなかなか届きません。「今は気持ちを整理する時間なんだ」と捉え、少し距離を取って見守ることも一つの方法です。
落ち着いてきたタイミングで、「悲しかったんだね」「悔しかったんだね」と気持ちを言葉にして伝えてあげることも効果的です。
気持ちを言葉で表す経験を積み重ねることは、癇癪そのものの減少にもつながっていきます。
気持ちを言葉にする関わり方については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
家庭で予防的に取り組めること
見通しを持たせる工夫
「あと5分で片付けるよ」「次はお風呂だよ」といった事前の声かけで、子どもが見通しを持てるようにすることは、癇癪の予防に役立ちます。
予定の変更が苦手な子どもには、絵カードやタイマーなど視覚的な手がかりを使うのも効果的です。
切り替えの難しさや順番を待つことの背景には、実行機能と呼ばれる脳の働きが関わっています。関連するテーマとして、以下の記事も参考になります。
大人が振り返りやすくしておく
癇癪が起きた場面をメモしておくと、「疲れている時間帯」「特定の場所」など、パターンが見えてくることがあります。
パターンが分かれば、癇癪が起きる前に環境を調整したり、事前に見通しを伝えたりする対応がしやすくなります。
まとめ
癇癪は、子どもの「困っている」というサインであり、わがままや性格の問題として片づけられるものではありません。
- 発達特性や環境要因など、背景にある原因を知る
- 癇癪の最中は、安全を確保しながら落ち着いて見守る
- 落ち着いた後に気持ちを言葉にする経験を積み重ねる
- 見通しを持たせる工夫で、予防的に対応する
自分が現場で見てきた子どもたちも、癇癪そのものが減るまでには時間がかかることが多いですが、大人が落ち着いた関わりを積み重ねることで、少しずつ気持ちの切り替え方を身につけていく姿を何度も見てきました。
今日からできる小さな工夫を、一つずつ試してみてください。
遊びながら思考力や創造力を育てる教材を取り入れてみるのもおすすめです。
