はじめに
2026年9月、さいたま市が市立の全167校にAI型教材を導入し、小学1年生から中学3年生までの約10万人が使い始めました。
学校から「1人1台端末」の話が届くようになって数年。配られた当初は「とりあえず持ち帰ってきた」という家庭も多かったと思います。
その取り組みは今、第2期(NEXT GIGA)に入っています。
この記事では、GIGAスクール構想第2期とは何か、AI型教材で学びがどう変わるのか、そして保護者として何を見ておけばいいのかを整理します。
自分は児童発達支援・放課後等デイサービスの現場で、端末を使って学習に取り組む子どもたちを見てきました。
その経験から、端末が合う子・合わない子の話も加えています。カタログ的な説明だけでは、家庭での判断材料にならないと思うからです。

GIGAスクール構想 第2期(NEXT GIGA)とは?
第1期は「配ること」、第2期は「使い続けること」
GIGAスクール構想の第1期は、コロナ禍によって計画が大きく前倒しされ、1人1台端末が短期間で配備されました。
それに対して第2期(NEXT GIGA)は、2024年度から2028年度までの5年間。配った端末を計画的に更新しながら、毎日の授業で当たり前に使える環境を整えていく段階です。
言いかえると、第1期が「配る」フェーズ、第2期が「使い続ける」フェーズということになります。
第2期の4つの柱
- 1人1台端末の計画的な更新(リプレイス)
- 高速で安定したネットワーク環境の確保
- 教育DXの推進と先端技術の活用
- ICT支援体制の強化と人材育成
保護者の立場から見ると、2つめと4つめが特に大事です。
端末があっても回線が遅ければ授業は止まりますし、支援する人がいなければ、ICTに不慣れな先生のクラスだけ使われないという差が生まれます。
端末更新の費用はどこから出ているのか
2023年度の補正予算で、都道府県に総額2,643億円の基金が造成されました。
| 基金の総額 | 約2,643億円(都道府県に造成) |
|---|---|
| 補助基準額 | 1台あたり5.5万円 |
| 更新の期間 | 5年程度かけて計画的に更新 |
| 対象 | 端末本体のほか、予備機や入出力支援装置も支援 |
| 調達方法 | 都道府県を中心とした統一・共同調達の仕組み |
「入出力支援装置」というのは、障害のある子が端末を使うための支援機器のことです。
ここが補助の対象に入っているのは、現場の感覚としてはかなり重要な点です。使える子だけが使う仕組みにしない、という意思表示だと受け取っています。
一方で課題もあります。MM総研の調査では、市区町村の多くが端末価格の高騰を懸念していて、全国の更新時期が集中することによる供給不足も指摘されています。
自治体によって端末が届く時期や機種に差が出る可能性がある、ということです。
自治体の最新導入事例
さいたま市:全167校・約10万人がAI型教材を利用開始
| 開始時期 | 2026年9月 |
|---|---|
| 対象 | 市立の全小学校・中学校・特別支援学校 167校 |
| 利用者 | 小学1年生〜中学3年生 約10万人 |
| 教材 | AI型教材「キュビナ(Qubena)」/株式会社COMPASS |
| 内容 | 小中9教科に対応。教科書に準拠した問題を中心に10万問以上 |
| 連携 | 学習eポータル「L-Gate」と名簿連携 |
注目したいのは、最後の「名簿連携」です。地味な話に見えますが、ここが導入の成否を分けます。
新しい教材を入れると、ふつうは先生が子ども全員のアカウントを登録し、年度が変わるたびに更新しなければなりません。クラス替えのある学校で、これは相当な負担です。
名簿連携をしておけば、その作業が増えません。先生の仕事が増えないことが、新しい仕組みが続く条件です。現場にいると、これは実感として強くあります。
和歌山市:校務用スマホの実証研究
| 期間 | 2026年8月21日〜12月31日(約4か月) |
|---|---|
| 実施校 | 八幡台小学校・西脇中学校 |
| 対象 | 教職員35名 |
| 内容 | 校務スマート化支援アプリ「SKYMENU Mobile」/Sky株式会社 |
学校現場では、校務連絡や行事の写真撮影に先生の私物スマホが使われてきたケースがあります。情報セキュリティの懸念があり、やり方が個人ごとにバラバラになる(属人化する)という課題もありました。
この取り組みでは、公用の環境を整えることで公私を切り離し、安全に情報を管理することを目指しています。
検証項目には、業務負担の軽減、校内コミュニケーションの円滑化、写真管理の効率化とセキュリティ向上などが挙げられています。
保護者としては、子どもの写真が先生の個人スマホに残り続けないという点が、いちばん大きい変化かもしれません。
AI型教材とは?得意なことと苦手なこと
AI型教材(アダプティブラーニング教材)は、子どもの習熟度に応じてAIが出す問題を変えていく教材です。
同じクラスでも、一人ひとり違う問題に取り組むことになります。

AI型教材が得意なこと
- つまずきの発見:どの問題でわからなくなったかを、単元ではなく問題単位で特定できる
- 一人ひとり違う出題:できる子は先へ、つまずいた子は手前の単元へ戻れる
- 待たずに丸がつく:その場で正解・不正解がわかる
- 反復が必要な領域:計算、漢字、英単語など
現場での実感を書くと、「みんなと同じプリント」が苦痛だった子に効くことがあります。
周りが次のページに進んでいるのに自分は1問目で止まっている。この状況が続くと、子どもは問題の難しさではなく「できない自分」のほうに意識が向きます。
自分のペースで進められる教材だと、そこが起きにくい。学習障害(LD)のある子にとっては、特に大きい違いです。
AI型教材が苦手なこと
- 「なぜそう考えたか」を聞くこと
- 答えのない問いを一緒に考えること
- 書く力・話す力・人と折り合う力
- やる気そのものをつくること
AI型教材は「反復と最適化」の道具です。ここは本当に強い。
けれど、考えを深めたり、意見がぶつかったときに折り合いをつけたりする部分は、人がやる領域として残ります。
「AIが先生の代わりになる」という話ではなく、先生が人にしかできないことに時間を使えるようになるという話だと理解しておくと、実態に近いです。
端末での学びをもっと知りたい方へ
▶ デジタル教科書のメリット・デメリット|紙との併用が子どもの脳を育てる
紙とデジタル、どちらが向いているかを脳の働きから整理しています
▶ 【2026年最新】LD(学習障害)とは?タイプ別特徴と学び方を変えるICT活用法
端末が学びを助ける具体例を、タイプ別にまとめました
家庭学習との役割分担
学校でAI型教材が反復を担うようになると、家庭で持つべき役割も変わります。

家庭でやらなくてよくなること
学校で習熟度に応じた問題を解いているのに、家で同じ計算ドリルをもう一度やらせる。これはほとんど意味がありません。
子どもにとっては「学校でやったのに、また同じことをやらされる」という体験になり、やる気を削ぐだけです。
家庭でこそできる3つのこと
1.話を聞く
「今日、どの問題で詰まった?」と聞いてみてください。AI型教材は、つまずいた場所が子ども自身にも見えています。言葉にすることで、理解が整理されます。
2.現実とつなげる
買い物の割引を一緒に計算する、料理で分量を半分にしてみる。画面の中の問題が生活とつながると、学ぶ理由が子どもの中に生まれます。
3.画面の外の体験をつくる
端末で得られないものを家庭が担う、という割り切りです。公園でも、工作でも、料理でも構いません。
画面時間との付き合い方|文部科学省が示す具体的な目安
端末の利用が増えるほど、目や姿勢への心配は出てきます。
文部科学省は、健康に配慮して端末を使うための具体的な目安を示しています(2022年3月改訂のガイドブック等)。
| 目と画面の距離 | 30cm以上離す |
|---|---|
| 休憩の取り方 | 30分に1回は、20秒以上、画面から目を離して遠くを見る |
| 姿勢 | 正しい姿勢を保つ |
「30分に1回、20秒以上、遠くを見る」。これは学校だけでなく、家庭での端末利用にもそのまま使える目安です。
あわせて、就寝前の利用を避けることも大切です。学校の授業時間は学校が管理できますが、寝る前の時間は家庭でしか守れません。
端末を寝室に持ち込まない、という線引きだけでも効果があります。
あわせて読みたい
▶ 子どもにスマホは何歳から?最新調査でわかる利用実態と家庭のルールづくり
学習用端末とは別に、スマホのルールをどう決めるかをまとめました
▶ 【宿題を始められない子は、怠けではない?】脳科学から考える対応
「やればいいのに始められない」の背景と、家庭でできる工夫
保護者ができる3つのこと
1.「端末で何をしているか」を具体的に聞く
「タブレット使ってる?」では、ほぼ「うん」で終わります。
「今日はどの教科で使った?」「どんな問題が出た?」と具体的に聞くと、学校での使われ方が見えてきます。授業で使われているのか、置いてあるだけなのかも、ここでわかります。
2.合わない兆候に気づく
端末での学習が、すべての子に合うわけではありません。次のような様子が続くときは、学校に伝えてよい段階です。
- 目の疲れや頭痛を訴える
- 画面を見た後にイライラしやすい
- 端末を極端に嫌がる
- 紙だと解けるのに、画面だと手が止まる
最後の項目は、現場でもよく見ます。画面上だと問題を目で追いにくい子、スクロールで位置を見失う子がいます。
これは本人の努力の問題ではないので、紙の併用を相談していい内容です。遠慮する話ではありません。
3.学校の運用ルールを把握しておく
トラブルが起きてから調べると、どうしても後手になります。入学時や年度初めの書類で、次の3点を確認しておくと安心です。
- 持ち帰りのルール(毎日か、必要な日だけか)
- 破損・故障したときの扱いと費用負担
- フィルタリングと使用履歴の管理方法
特に2つめは、自治体や学校によって対応が違います。第2期で端末の更新が進む時期なので、ルールが変わっている可能性もあります。
まとめ
- GIGAスクール第2期(NEXT GIGA)は2024〜2028年度の5年間。「配る」から「使い続ける」段階に移りました
- 端末更新には都道府県に総額2,643億円の基金。補助基準額は1台5.5万円で、予備機や入出力支援装置も対象です
- さいたま市は全167校・約10万人がAI型教材を利用開始。名簿連携で先生の負担を増やさない形にしたことがポイントです
- AI型教材が強いのは反復と最適化。考えを深めることや、やる気をつくることは人の役割として残ります
- 家庭の役割は、量を増やすことではなく方向をつくること。話を聞く、生活とつなげる、画面の外の体験をつくる
- 画面時間の目安は「30cm以上離す」「30分に1回は20秒以上遠くを見る」。就寝前を避けるのは家庭でしか守れません
端末が入ったことで、学びの選択肢は確実に増えました。
ただ、増えた選択肢の中からその子に合うものを選ぶ作業は、まだ人の仕事です。合わない様子に気づいたら、遠慮せず学校に相談してください。
